腕利き泥棒のためのアムステルダム・ガイド (THE GOOD THIEF’S GUIDE TO AMSTERDAM, ) |
講談社文庫 |
初版2008年8月12日 |
あらすじ |
泥棒稼業には才能を煌かす、冴えないミステリ作家のチャーリー・ハワード。アムスで「見猿、聞か猿、言わ猿」の人形を盗むよう依頼され、訝りつつも、鮮やかに遂行(スチール)。しかし、依頼人の元宝石泥棒は拷問で殺され、一転してチャーリーは殺人の容疑者に。身の潔白とダイヤを獲得すべく、得意の暴走推理が炸裂!?。
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感想 |
イギリスの作家チャーリー・ハワードは泥棒を主人公にしたミステリシリーズを書く作家だが、実は本物のプロの泥棒。で、最新作を書き上げるためにアムステルダムに滞在していたのだが、謎のアメリカ人から奇妙な依頼が舞い込んで来る。見ざる言わざるの猿の人形を盗んで欲しいと言われ、いったんは断るチャーリーだが好奇心に負け盗みを決行、そして成功する。が、報酬を受け取るべく謎のアメリカ人との待ち合わせ場所へ向かうが・・・彼は拷問を受けて瀕死の状態でついには病院で息を引き取ってしまう。泥棒に成功したと喜んだのもつかの間、殺人事件の容疑者として拘留されてしまうチャーリー・・・という展開です。
ジャンルからいうとユーモアミステリ、コージーミステリでしょうか。アガサ賞にノミネートされても良い作品(=惨い殺戮シーン無し&エロも無し)なので、正統派イギリスミステリと言ってもいいのかもしれません(笑)。それと〜今時珍しい古風な匂いを漂わせている作品です。作中でカギとなる『3つの猿の石膏像』が出てくるのですが、この辺りを読んでいてホームズの短編『6つのナポレオン像』を思い出しました。本作でも何の価値も無い石膏像を狙って事件が起こり、そこで死者が出るんですよね。そして、死んだ依頼人は12年前に起こったダイアモンド強盗の犯人で〜と来たもろ「6つの〜」みたいだよね?(笑)でもって、主人公である作家であり泥棒なチャーリーが出版エージェントの疑問に答えながら結末を披露する場面ではホームズとワトスンの関係を思い出させるし、古典作品を多分に意識して(オマージュ?)いるのが見え見えで。ラストシーンも古典的でした。関係者一同を一箇所に集め謎解きして見せ『お前が犯人だ!」などと名指しするシーンなどあって笑いながら読み進みました。が、ハラハラドキドキを求められる読者には不向きかもしれない。ジェフ・アボットやシャーロット・マクラウドのファンの方にお勧めしたい作品ですし、親と子で読める珍しい作品だと思います。ワタクシはというと、コージーを読んだのは多分3年ぶりぐらいだったのですが、楽しんで読めました。
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