オーロラの向こう側/赤い夏の日


オーサ・ラーソン(ASA LARSSON)作家略歴&著作の感想
作家名 オーサ・ラーソン(ASA LARSSON)
生年月日 1966年
生誕地  スウェーデン キールナ
処女作  『オーロラの向こう側』
デビュー年 2003年
公式サイト

作家略歴

1966年スウェーデンのキールナ生まれ。弁護士としてはたらいたのち、2003年に発表した『オーロラの向こう側』で作家デビュー。スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀新人賞を獲得した。同書の主人公、女性弁護士レベッカ・マーティンソンを主人公とした2004年の第二作The Blood Spilt(ハヤカワ・ミステリ文庫近刊)では、最優秀長篇賞を獲得している。

Series
Rebecka Martinsson(レベッカ・マーティンソン シリーズ)
1. Sun Storm (2006)『オーロラの向こう側(2008年早川書房)』aka The Savage Altar
2. Det Blood Som Spilt (2007)『赤い夏の日(2008年早川文庫)』
3. The Black Path (2008)

オーロラの向こう側
(SOLSTORM)
早川書房文庫 初版2008年8月15日
あらすじ  ひさしぶりに聞いた故郷の町の名は、首都で働く弁護士のレベッカにとって、凶事の前触れだった。北の町キールナの教会で若い説教師が惨殺されたのだ。そのニュースが流れるや、事件の発見者で被害者の姉のサンナから、レベッカに助けを求める連絡が入る。二人はかつては親友の仲であり、レベッカ自身もその教会とは深い因縁があった。多忙な弁護士業務を投げ捨てて、レベッカは北へと飛びたった…。

 
感想  とある事件が原因で、若くして故郷を飛び出し首都で弁護士として働いていたレベッカに、かつての親友から電話が入る。彼女の弟であり教会の説教師ヴィクトールが教会内で惨殺されたのだ。で、頼りない親友の助けになればと故郷へ戻ったレベッカは・・・という展開の物語です。捨てたはずの故郷へ戻らねばならなくなったレベッカは否応無く自分の過去と向き合うことになり〜その過去が現在の惨殺事件にも深く関与しているという内容なので物語りにふれること自体がねたばれに繋がるのでなんとも感想が書き難い作品なのですが(汗。
ミステリとして読むなら詰めが甘いと言わざるをえないんですが、なぜか不思議と物語としては纏まっています。この作家、人物を描くのが巧いんだろうと思うんですよ。なぜなら、物語に出てくる被害者の姉という人物がこれまたいけ好かない人物なんですよね。子供が二人もいて女手一つで子を育てているというのに自分の力で何とかしようという気が全く無いんですよね。弟殺しの嫌疑で逮捕され裁判になるかならないかという一大事の時に『議事録をとっていた若い男の人、わたしをじっと見つめていたわ。気がついた?』なんていう事を気にするような女なんですよね。この一風変わった(というか精神に以上を来たしているとしか思えない)容疑者がもうちょっとしっかりしていたなら物語は半分のページで済んだはずなんですよ。で、こんな風に登場人物が嫌いだと思わせる作者は巧いんだろうと思うわけです。
でね、主人公もイマイチな女なんですよ(笑)。留置されている女の娘二人を預かっていた主人公は危険を感じて逃げる場面があるんですが〜彼女・・・ドアに鍵をかけないんですよね。で、その場に殺人犯が現れるわけです。詰めが甘いというのはこういう場面を言っているのだけれど〜登場人物のやる事なす事がミステリの登場人物らしくないんですよね(汗)。これが米英のミステリなら、こういう抜けた登場人物たちは喜劇として描かれることが多いので〜シリアスなスリラーとして読むならなんとなく違和感を感じます・・・。物語の核にある「教会に潜む悪」という点は面白く、途中まではイケているので惜しいなという印象です。この物語の2作目の邦訳も決まっているそうなので、次回作に期待します。伸びそうな予感がする作家なので追いかけるつもりです(←偉そうな(汗))。 作家名INDEXホームへ戻る



赤い夏の日
(Det Blood Som Spilt)
早川書房文庫 初版2008年10月25日
あらすじ  悲惨な事件に巻込まれ、心に傷を負ったままのレベッカは、職務に復帰した法律事務所で空虚な日々を送っていた。そんな彼女が、上司の出張に同行して故郷のキールナへ戻ってきた。だがそこで待っていたのは、またしても殺人事件だった。教会の女性司祭が夏至の夜に惨殺されたのだ。ふとしたことから被害者の周囲の人々と関わることになったレベッカは否応なしに事件の渦中へ…。

 
感想  いやぁ〜早川書房に拍手を送りたいっ。いかに物覚えの悪いワタクシと言えど、前作から二ヶ月で次作を出していただければ内容をある程度は(?)覚えているので、前の作品を思い出せず悔しい思いをするっちゅうことがなくて済みました(笑)。本当は英訳されたものを重訳されたのじゃなく、スェーデン語から直訳されたものを読みたいけど、訳者さんがいないのなら文句は言わない。何年も待たされるより重訳の方が好いのだ。ついでに言っておくと、たとえ巧い訳者さんだろうが何年も待たされるのは御免なのだっ。
で、詳しく書くと前作のネタバレになってしまうから書けないけど、物語はというと・・・
主人公の弁護士レベッカは前回の事件で精神がズタボロになり、未だ病気休暇中だった。が、上司の出張先がレベッカの故郷キールナということで、同行しないかと誘われ ついて行くことに。が、キールナに戻ったレベッカは、そこで殺人事件が起き未解決のままだということを知る。教会の女性司祭が夏至の夜に殴り殺された上、教会内に吊るされていたという・・・という展開です。主人公のレベッカの職業は一流弁護士という設定なんだけど、専門が金融やら税法やらなんですよね。で、その彼女が二度も連続で(前回も今回も宗教家が被害者で)殺人事件に巻き込まれるというのはちょっと不自然だけど、次回作から彼女は検察側の仕事をするようになるそうなので今回までは目を瞑ります(笑)。まぁ、設定自体に無理はあるんだけど、この作家 人を描くのが巧いんですよね。田舎町で暮らす人々やらの描写が良いので、犯人は誰だという謎解き以外の部分が良くて読まされているといった感じです。ただね〜読後感がね・・・。登場人物が魅力的だったからこそ、この悲劇的な終わり方(謎)は「うっ」と来るものがあって、万人に向くミステリじゃないかなという気がします。なんかね〜〜〜。子供を守るために殺人が起こり、その子供を守るために犯人を知っている人も口をつぐみ、それが原因で更なる殺人が起こるという・・・まぁ、悲しい物語でした。



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