プラチナ・ビーズスリー・アゲーツ(三つの瑪瑙)スノウ・グッピー夢の中の魚君の夢はもう見ない

五條 瑛 作家紹介&作品紹介
作家名 五條 瑛(ごじょう あきら)
生年月日 19年月日
生誕地  **  
処女作  プラチナ・ビーズ
デビュー年 1999年2月
公式サイト


五條瑛 作家略歴&紹介

大学時代は安全保障問題を専攻。卒業後、防衛庁に就き、主に極東の軍事情報及び国内情報の分析を担当する。 退職後は、フリーライターとして活躍。1999年2月、”プラチナ・ビーズ”で作家デビュー。「スリー・アゲーツ」 で第3回、大薮賞を受賞した。(ハードボイルド賞らしい)リアル感と人物造形の上手さが特徴だろうか?。 作家自身が、極東圏が好きだからアジアが舞台の小説を書いてしまうそうだ。 本人は「いつまでも、ペーパーバックを書きたいです」とのこと。
北朝鮮を材にしたり、日本にある米軍基地や自衛隊等を描くので旬(?)の作家だろう。この手のストーリーは大好きなのだが、 この作家の著作を立て続けに読むと飽きがくる。五條氏はキャラクターを描く事に力を入れすぎるのだ。女性ファンが多いことが 非常に謎だったのだが、読んでみてその謎が解けた。登場人物の人物造形は巧いと思うが、色男が登場し過ぎで現実味が無い・・・。 だが、面白くない訳では無い。
著作・スリー・アゲーツ/プラチナ・ビーズ/夢の中の魚(集英社)紫嵐/断鎖(双葉社)冬に来た依頼人/ 3ウェイ・ワルツ(祥伝社) 等。



プラチナ・ビーズ 集英社 ハードカバー 初版:1999年2月28日
あらすじ 人的情報収集活動のプロである葉山は、ある日、事情聴取した「対象者」の言葉に引っかかりを覚えた。 北朝鮮で何か新しい動きが始まっているのではないか?在日米軍の支援を受ける情報組織の指示で、葉山は調査に乗り出す。
 同じ頃、脱走した米兵の惨殺死体が発見される。横須賀基地の海軍調査軍の坂下も、同じく調査に乗り出す。 彼らの聞き取り調査の中で、何度も登場する謎の男。そして、謎の言葉”プラチナ・ビーズとは?迷走する北朝鮮と米国の諜報戦争を 軸に、否応なくそれに巻き込まれていく人間たち。鉱物シリーズ第一作。
 
感想 これが、デビュー作とは思えない出来ではある。ハードボイルド物なのだが、小さな枠に収めきれない内容。 諜報活動の中で、何度も登場する謎の「フェロモン男」の目的を探るというストーリーなのだが、最後の最後まで謎が明かされず、 この作家の上手さが存分に出ていた。この謎の男が面白い。終盤まで伝聞でしか描写されないのですが、一言で表すなら ”ハリウッド俳優”だそうな(笑)。作者が女性の為か、男性の見た目の描写が多いのも特徴だろうか? (異常なほど美形の登場人物が多い)。
この作品に、飢餓で苦しんでいた幼児が出てくるのだが、著者の別シリーズにも登場する。 (年に一冊出版される”革命シリーズ”。10冊で完結を迎えるらしい・・・彼のその後が気になる) 伏線も多い。登場人物が非常に多いので、途中何度も「この人だれだったっけ?」なんて事もあった。 (集英社は、ハードカバーに登場人物表が無いのだ!非常に不親切だと思う!) 最後のクライマックス(謎解きシーン)が、モタモタしていて(薀蓄が多い)気になったけれども、 作品の出来は良なので、この後に期待。色々なマイナス面を相殺してしまう程の、スピード感には拍手!。

スリー・アゲーツ(三つの瑪瑙) 集英社 文庫 初版:2002年11月25日
あらすじ ソウルから日本へ、北朝鮮の大物工作員・チョンが潜入した。大量の偽ドル札と 共に・・・。ドルを捌くのならアジアに向かう方が得策だ。なぜ日本に来たのか?米国防総省の在日 情報機関に所属する分析官・葉山はチョンの残した文書の解読を進める。同じ頃、平壌に住む母娘が 中韓国境を目指していた。
 
感想 プラチナ・ビーズに続く鉱物シリーズ二作目。前作を読んでいなくても、OKの内容です
この作家の作品のジャンルには悩む。ミステリと呼んでいいのか冒険小説と呼ぶのかは悩むところだなぁ。まぁ面白ければどっちでも良いんだけどさ。 テロ国家に生まれついた工作員の苦悩、リアルな描写、美形登場人物が多い・・等、いつもの五條作品です。 この著作は文庫で購入されることをお薦めします。本作のその後を描く短編が、おまけで付いているからお買い得♪。 そして、五條氏の文庫を始めて購入して思った。この人潔いなぁ・・・と。解説も後書きも無いのですよね。後書きや解説は邪魔だと 思う私には、非常に好感が持てる。他人の評価は読者のみで良いと、作者が言っている気がします。改稿無しで、エピローグをを付けてくれるの なら、大喜びです。文庫にする度に改稿する作家は嫌いです(誰とは言わないけどさ)。何冊も買えとでも言っている気がします。 その点も、五條氏を気に入っている理由かもしれません・・・。



スノウ・グッピー 光文社 ハードカバー 初版:2001年12月20日
あらすじ 関東電子機器に勤める三津谷は、上司から緊急呼び出しを受ける。会社と自衛隊で共同開発中の”軍事電子機器グッピー”を搭載した戦闘機が、北陸沖に墜落したというのだ。 グッピーは、引き揚げ可能な海域にあり、諸外国の手に渡すわけにはいかない!時を同じくして、開発に携わった技術者が忽然と姿を消す。暗躍を始める各国の諜報員との戦いが始まる!

 
感想 雑誌連載されていたものを、大幅に加筆・修正しただけあって、前作よりは出来が良い?。 この作家の特徴でもあるのだが、多視点で描かれている。(シーンが目まぐるしく変わるため、その時々の登場人物に焦点が当たり、 結果的に人物像が浮かび上がってくる)
 主人公と自衛隊エリート幹部が非常に魅力的で、続編が読みたくなるが、現実にはいそうに無い。この作家の不思議な魅力は、 読んだ人でないと解らないのかもしれないが・・・(登場人物に妙な色気がある) 多数の人物と謎が複雑に絡み合い、最後まで持続するドキドキ感。 この作家の本を読むたびに感じるのだが、強いメッセージが伝わって来る。作者自身が日本の防衛力に強い懸念を抱いている事が、 伝わる気がする。勿論フィクションだが、このリアル感はさすが元防衛庁職員!。 日本の国防がテーマだというと、重そうに感じる方も多いだろうが、心配は無用。軽い内容に感じるのは作者がキャラに力を入れる 所為だろう。

夢の中の魚 集英社ハードカバー 初版:2000年12月20日
あらすじ 韓国情報部の情報員、洪(ホン)を中心に、ホンの相棒パクや他国の諜報部員達との駆引きを描く連作短編集。
洪敏成(コードネーム東京姫)の表の顔は”韓国日報の記者。ジャーナリストという立場を最大限に活かし、祖国のために様々な情報を集めるのが任務だ。目的の為なら手段を選ばない男が?むネタの数々とは?・・・

 
感想 面白かったけれど、前に読んだ3WAY WALTZ程ではなかった。秀作には違いないのだが、 立て続けに読んだので、つい比べてしまうし、飽きてくる。この作品は雑誌に連載されていたものに、 プロローグとエピローグを書き下ろし、一冊にまとめた連作短編集だ。前から思っていたのだが連作短編って、 雑誌の連載には便利だけれど、本の持つスピード感や、緊張感は断ち切られてしまうのでは?作者の腕を問われるよね。 非常に面白いストーリーなのだが、3WAY に比べるとハラハラドキドキ感が無かった・・・(しかたないのか?短編集なのだから)。
諜報戦がテーマにしては、地味な作品。「主人公洪(ホン)と相棒パクの魅力で読まされた」という印象だ。 この作品が多分4冊目にあたるらしいので、まだ成長過程なのだろうか?。キャラに力を入れすぎだと思うが、 その代わり読み易く仕上がっているのでどっちが良いのか分からぬなぁ。



君の夢はもう見ない 集英社ハードカバー 初版:2002年10月30日
あらすじ アメリカ国防総省の情報機関の一つである<会社>のメールマンを勤めていた仲上。 現在は、「中華文化思想研究所」の所長だ。独立採算制の出版社として、情報関係の活動とは距離を置いている。国際諜報戦の末端に身を置く仲上の目に映る現在の中国とは・・・。鉱物シリーズ(プラチナ・ビーズ)番外編?。

 
感想 プラチナビーズ、スリーアゲーツ(鉱物シリーズ)に登場する、仲上所長が主人公の連作短編集だ。 仲上は冷戦時代にはスパイだったのだが、現在は普通の出版社の所長。その所長の下に様々な事件が舞い込んでくる。 (シリーズに出てくる葉山まで、サービス登板だ。)
シリーズでも、不思議な魅力のあった仲上の過去がちらほらと見える。終わり方も唐突だった。五条氏は、この作品もシリーズ 化するのか?。まだまだ続きそうな終わり方なのだ。謎の人物が出てくるが、謎のまま終わった。引っ張るなよ!おい!。
この作家が良く使う「手」が、この著作でも出てくる。最初と最後が書簡なのだ。引き込まれる。この手紙形式には、身悶えする。 何故だろう。ですが、はっきり言って、鉱物シリーズを読んでいない人には面白くないだろう。多少の説明はあるものの、 仲上の<会社>との関係が分り難いからだ。この本は、鉱物シリーズファン向けのおまけだと思う。五條氏の著作を読んだ事が無い人には、 お薦めできない。と言って、面白くないわけでは無いが・・・。