アン・クリーヴス作家略歴&著作の感想 |
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作家名 | アン・クリーヴス(ANN CLEEVES) |
生年月日 | 1954年 |
生誕地 | イングランド ヘレフォード |
処女作 | 『A Bird in the Hand』 |
デビュー年 | 1986年 |
公式サイト | http://www.anncleeves.com/ |
大鴉の啼く冬 (LAVEN BLACK) |
東京創元社 文庫 | 初版2007年7月27日 |
あらすじ | 新年を迎えたシェトランド島。孤独な老人マグナスを深夜に訪れた黒髪の少女キャサリンは、4日後の朝、大鴉の舞い飛ぶ雪原で死んでいた。真っ赤なマフラーで首を絞められて。住人の誰もが顔見知りの小さな町で、誰が、なぜ彼女を殺したのか? 8年前の少女失踪事件との奇妙な共通項とは? ペレス警部の前に浮かびあがる、悲しき真実。
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感想 | 8年前、シェットランド島の小さな集落に住む少女が忽然と姿を消した。最後に目撃された場所に住むマグナスという知的障がいを持った老人が犯人と目されたのだが、決定的な証拠がなく不起訴で終わっており少女は見つからぬまま。で〜そのマグナスは逮捕はされなかったけれど島の島民から口も聞いてもらえず共同体から爪弾きされて暮らしていた。そして、新年を迎えたシェトランド島。孤独な老人マグナスを深夜に訪れた黒髪の少女キャサリンは、4日後の朝、大鴉の舞い飛ぶ雪原で死んでいた。真っ赤なマフラーで首を絞められて。キャサリンを殺したのは誰か?8年前の事件との関連性は?島中の人々がマグナスの犯行だと確信を抱く中・・・という展開です。 いやぁ〜久々に英国らしいミステリを読みました(笑)。それも、中々に本格的なミステリなんですよね。三人称で書かれているのですが、視点は4つ(4人)で多視点なのです。主要登場人物4人の視点で物語りは進んでいくのですが、作者が非常に丁寧に物語の構成を行ったのだと窺い知れる展開です。下手な作家がこの手法を使うと、読者は混乱するというか物語りに入り込めないまま終わることが多いのですが、この作家はなかなかに巧者ですね。三人称多視点で描く作家といえばディーヴァーが真っ先に浮かぶけれど、この作家はディーヴァーに負けず劣らず計算ずくで書いてますね。それと〜このシェットランド島の描写が好いのですよね。小さな小さな島で観光シーズンだけしか余所者の入り込むことのない閉鎖的な島というこの舞台設定が、昔懐かしいミステリを読んでいるような感じで楽しめました。この作家、あえて短所を探すなら・・・スピード感が無いことでしょうか?。ですが、その短所もゆっくりと時間が進む閉鎖的な島の雰囲気とマッチしていて短所とも言い難いし(笑)。お勧め作家です!読んでみて下さいませ〜。そして、シリーズ物の邦訳を望みます。ぜひとも読んでみたい作家です。 余談・・・この題名の大鴉(オオガラスと読んでいいのか?!)。LAVENってのが大鴉なんでしょうけど〜日本のカラスと同じ鳥なのでしょうかね???。日本のカラス=CROWだと思っていたのですが、カラスってそんなに何種類もいるのでしょうか?。英語が苦手なワタクシは最初から最後まで『LAVEN」ってどんな鳥?!』と考えてました(笑)。 ![]() ![]() |
白夜に惑う夏 (White Nights) |
集英社文庫 | 初版2009年7月日 |
あらすじ | シェトランド島に夏がやってきた。人びとを浮き足立たせる白夜の季節が。地元警察のペレス警部が絵画展で出会った男は、次の日、桟橋近くの小屋で道化師の仮面をつけた首吊り死体となって発見された。身元不明の男を、だれがなぜ殺したのか。ペレスとテイラー主任警部の、島と本土をまたにかけた捜査行の果てに待つ真実とは?“シェトランド四重奏”第二章。
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感想 | 面白かったんです。作品の雰囲気も好いし、描かれている舞台も好いし、作品自体は好みの作品なんですが・・・残念ながら前作の内容をほとんど忘れていたので、楽しみは半減どころか激減していたんじゃないかと思われます。やっぱ、記憶力に問題のあるワタクシは1年以上間が空くと覚えておられないようです。ってかさ、二年も前に読んだ作品を事細かに覚えておられるような人はおらんと思うんやけど、どうなんでしょうね?。ま、感想に行きますが・・・。 シェットランド島の夏は白夜であり、世界中から多くの観光客が訪れる。地元警察のペレス警部は、前作で知り合った恋人のフランと出かけた絵画展で画を前に号泣し嗚咽する男を見つけた。ペレスはその男を介抱するが、男は記憶をなくしており、自身が何者かも分からないという。そして、その男は絵画展から忽然と姿を消したのだが、翌朝。桟橋近くの小屋で首吊り死体となって発見された。検視の結果は他殺。ペレス警部は再びテイラー主任警部と組んで捜査に当たるが第二の殺人事件が起こり・・・という展開です。 プライバシーなど存在しないかのような小さな島の小さな町で、実はそれぞれが秘密を抱えているんだけど、島民はお互いに相手を詮索せず相手の領域を犯さないよう気を使いながら暮らしてきたわけですよね。その「隣人を詮索せず、追い込まず」という暮らし方が悲劇を生むという物語なのですが、この作家 本当に巧いなという印象です。ミステリとしては謎が薄いというかオチはよくある展開なんですが、何が良いってこの閉鎖的な環境に住む町の人々の生き方や人間関係を細かに書き込んであるのが良いんですよね。ミステリを読んでいるというよりは、普通小説を読んでいるような感覚です。「昼間はぎらぎらと降り注ぎ夜になっても消えない光」の中にいると「白夜の時期は誰でも頭がおかしくなる」そうで〜島にも行ってみたいと思わせる舞台でした。謎解き重視の方の評価は低いでしょうが、人間もちゃんと描けてないとと仰る読者にはお勧めです。(邦訳間隔が空くようなので、4作品全作が出揃ってから一気に読むのも良いかもですね(汗)) |